住宅が所狭しと密集している都市部には、そこに家が建っているのに「再建築不可」という物件がある。そんな再建築不可物件が土地評価額が高い地域であっても安く売りに出されているケースがある。専門の業者もいるぐらいだ。そんな、再建築不可物件を安く買っても有効活用できるのだろうか?
もくじ
再建築不可物件の真相
家が建っているにもかかわらず、その家を取り壊して新築の家を建てる事ができない物件。それが再建築不可物件である。なぜそんな家があるのでしょうか?
建築基準法の壁
再建築できない理由には建築基準法の大きな壁がある。よくある理由は建築基準法第43条1項で「建築物の敷地は、道路に二メートル以上接しなければならない。」と定められている。さらに道路の定義は建築基準法第42条で「道路とは幅員四メートル以上のもの」となっている。つまり建築基準法によると「建物を作る時は、幅員4メートル以上の道路に敷地が2メートル以上接していないと作ってはダメです」という事になる。さらには「道路」の定義が様々ある中でこの条件に該当しない土地には建築許可がでないのです。
何で建築できない土地に古い家が建ってるの?
実は建築基準法は施行されたのが昭和25年です。第二次世界大戦が終戦した年(昭和20年)から5年後の事であります。終戦以前に建てられた家や終戦後も建築基準法ができるまでの5年間に建てられた家はそのまま残っているのです。または終戦後のゴチャゴチャな時代に建築基準法施行後にも違法に建てられた家もあった可能性もあります。
そこに家を建てたいならリフォーム・リノベーションしか無い。
建築基準法の壁で既存の古い家を取り壊して新築ができないなら、今ある古い家を残したリフォーム又はリノベーションをするしか方法はありません。
リフォームとリノベーションの違い
リフォームとリノベーションの境目が曖昧ですが、新築時から経年劣化で古くなってきた家を元の状態(新築時と同等に)に戻したり、住む人が変わった時に古いキッチン周りをシステムキッチンにしたり、古いお風呂をユニットバスにしたりする設備の取り換えや、外壁の張替え、屋根材の張替えだけを行ったりと工事の規模が比較的小さい工事をリフォームと言い、比較的現状回復に近い工事の事です。リノベーションは新築時よりも家全体の機能を上げる大規模な工事です。例えば4LDKの間取りを5LDKにして部屋を増やしたりと古い住宅全体を一新させる工事を指します。リノベーションした家によっては新築の家に見える時もあります。
再建築不可物件の古い家はリノベーションする
建築基準法施行以前の家なら60年以上経過していますから、安心して暮らすためにはリフォーム程度の工事では耐震性にも問題がでる可能性があります。かと言って古い家を取り壊すと新築になってしまい建築許可が出ない為、家の基礎や柱・屋根といった構造、いわゆる骨組みを残して間仕切り壁などを撤去し工事を行う方法を選びます。しかしあまり骨組みだけにしてしまうと、それだけ費用が新築により近くなっていきます。また床面積が10mを超える増築には確認申請も必要になりますので注意が必要です。いずれにしても、最近は古民家を自身でDIYするリノベーションが流行っていますが、建ぺい率や容積率が超えないように専門家に依頼するのが一番良い方法です。
何十年も人が住んでいない家は劣化が酷い
再建築不可物件が売りに出されているケースで多いのは、古い家が何十年も人が住んでいない空家の状態だった物件です。人が住んでない空家の家は劣化するのが早いと言われています。それは人が住んでいないと窓の開け閉めなどの換気が全く行わない為に湿気やカビ菌が発生する事で、柱や構造に使わている木材を腐らせるためです。また、水道も使われない為に、排水管なども劣化します。カラカラに乾燥した排水管には水もなくなり下水にいる虫やネズミが排水管から屋内に出入りします。実は東日本大震災で福島から避難してきた人の家も同様でした。比較的新しい家で戸締りもしっかりしていたにもかかわらず、避難先から一時帰宅した際は室内がネズミなどの糞でいっぱいだったといいます。人が住んでない家や掃除等の手入れが出来ていない家はこのような理由から劣化が早まるのです。
痛みが少ない家なら外壁と屋根、内装をリフォームする。
古くても痛みが少なく、最近まで人が住んでいた一戸建て住宅はリフォームでも良いでしょう。再建築不可物件を購入した時のリフォームは内装に目が行きがちですが、実は外側が一番重要です。屋根や外壁は雨や雪、風に紫外線など毎日自然環境と向き合っており内側より劣化が激しいのです。特に屋根や外壁に塗られているペンキ(塗料)は剥がれ落ちている可能性があります。ペンキが劣化すると、ペンキの下にある外壁材や屋根材が雨や紫外線を直接受けるためさらに痛みやすくなります。
昔のペンキなら10年から15年しか持たない。
今はシリコン塗料やラジカル塗料といった15年から20年持つといわれる屋根・外壁用の塗料がありますが、今から20年以上前の住宅はそんな塗料は使っていません。昔の塗料ならすでにペンキが剥がれたりしているはずです。ペンキは雨をはじく重要な役割があり、紫外線からも家を守ってくれていますからしっかりと塗り替えをしましょう。
必要なら外壁材も張り替える
外壁の塗料も剥がれ落ち、外壁にもヒビ割れや痛みがあるなら思い切って外壁リフォームをしたほうが良いかもしれません。昔と違い今は外壁材のデザインが豊富です。主にサイディングという外壁が一般的です。工事も簡単で、ボード状になったサイディングボードを壁に貼り付けていくだけです。施行時は今の家の外壁を取り除いてから張る方法と、今の壁に重ね張りする方法もあり、その家の状況によって施工方法も変わってきます。外壁の張替えを行うなら屋根材の張替えも検討しましょう。というのは、外壁の塗り替えや張替えには家の周りに足場を組んで施工を行います。足場の設置代金もバカになりませんから予算があれば一緒に行ったほうがお得です。